アシステッドリビングとスペシャルケア施設
アメリカでは、現役を引退した健康な高齢者が、自立した生活を楽しみ、意義ある余生を送れるインディペンデント施設が1970年代に事業として成立してきました。
しかし、入居者が高齢になるにつれ、程度の違いはあっても介助や介護の必要性が増加していきます。そこで、健常者向けの施設だけではその需要に応えられなくなり、介護サービスを行う施設が求められるようになっていったのです。
しかし、入居者が高齢になるにつれ、程度の違いはあっても介助や介護の必要性が増加していきます。そこで、健常者向けの施設だけではその需要に応えられなくなり、介護サービスを行う施設が求められるようになっていったのです。
1992年におけるこれら介護市場の規模は790億ドルと推計されている中でナーシングホーム(日本における特別養護老人ホーム)が約半分を超える428億ドルを占めています。しかしナーシングホームに収容されている高齢者の30%は、他に適切な施設がないため入居していたに過ぎないのです。活動的、外交的な人たちは、高齢になっても堅苦しく費用のかさむナーシングホームに閉じ込められることを望んではいません。
高齢による心身の障害は病気ではなく、適切なサービスを受けられる施設があれば、高齢者個人個人の尊厳とプライバシーが守れ、個人の趣味嗜好やライフスタイルを保ちながら一生を全うすることができる施設を望むのは当然のことです。ここに着眼してその後、アシステッドリビング施設が事業として急速に発展していったのです。
アメリカ社会の高齢化も急速に進んでおり、第2次世界大戦後のベビーブームの際に誕生した7600万人を超えるベビーブーマーが、1996年から2016年には50歳に達することになります。この世代の平均寿命は、親の世代よりも21.6歳長くなると予測されています。また親の世代も、これまでの世代の中で一番幸福で健康かつ活動的で裕福な世代になっているのです。人口統計局の推定では、80歳以上の高齢者の人口は、1990年の310万人から2000年には430万人になるとしています。この増大は、最後のベビーブーマーが80歳になる2044年まで継続します。
インディペンデントリビングに始まった高齢者の居住施設は、加齢による入居者の病弱か、心身障害の発生により、介助介護のサービスを提供するアシステッドリビング施設の必要性が認識され、1980年半ばから民間事業として行われるようになり、1990年代初頭には急速に拡大してきました。さらに65歳以上の人口の10%、75歳以上で25〜30%、80歳以上では40%以上が痴呆症・アルツハイマー症になることから、スペシャルケア施設が建設されるようにもなったのです。
今日、アメリカでは痴呆症の高齢者が400万人以上存在すると推定されています。歴史的に見て、痴呆介護を何らかの形で必要とする人たちはほとんどすべてが特別介護ホームで、型にはめられたかたちの介護を受けてきました。しかし、痴呆・アルツハイマー症とそれに関連する障害についてさまざまな角度から研究がされた結果、中程度の痴呆・アルツハイマー症高齢者の場合、自宅に似た環境で入居者それぞれの症状や身体状況などの違いを考えた対応が極めて効果的であることが明らかになってきました。いかに自宅での生活に似た快適な環境で、しかも費用と介護の面で効率よく介護できるかを考えてつくられたのが、スペシャルケア施設なのです。
やがて連邦および州の行政当局も、特別介護ホームからこれら施設への移動を推進するようになりました。
行政が施設への補助金を支出することはありませんが、事情に応じて各個人にメディケア(高齢者医療保険)やメディケイド(医療補助)による給付を行うようになりました。また、民間の医療保険も、入居者の保険金給付を認める方向にあります。これら施設が、費用からみてもナーシングホームを建設するよりも、より経済的であることも、保険金給付を認める大きな要因となっているのです。アシステッドリビングやスペシャルケア施設に入居者を移動させることが、国の財政の面からいっても経済的なのです。
これらの施設を運営する理念は、
● 高齢者のニーズを最優先する
● 高齢者にできる限りの選択肢を持たせる
● 高齢者の尊厳を保つ
● 高齢者の自立を助ける
● 高齢者のプライバシーを尊重する
等であり、高齢者のニーズを最優先に考えることが民間事業としての収益の向上に結びついているのです。
これらの施設の特徴は、なんといっても料金体系にあります。多額の入居一時金を必要とせず、月額家賃・費用の2ヶ月分のコミュニティーフィーのみが必要です。そして料金は、月次家賃の形態を取りますが、居室の広さ、介護サービスの内容で金額が異なります。
もうひとつの特徴は、「フレックス・アシスト方式」というサービスを導入していることです。これは、入居者一人一人の心身の状態に合わせて、介護・介助のサービス内容を個別に決定すべく、サービスを選択メニュー化したものです。つまり、基本サービスとオプションサービスがあり、必要とするサービスを高齢者自身が選び、その分の料金だけいただくという仕組みなのです。
施設には、ラウンジ、レクリエーション施設、アスレティックルーム、物理療法施設、美容室、理容室、図書室等の共有施設が設置され、一日3回の食事は外部レストランと同等の食堂で、メニューの中から好きな食事を選ぶことができます。医師は常駐しませんが、診療室を備え、近隣の病院と医療協定を結んでいます。居室には、トイレ、浴室、簡単なキッチンがついており、入居者は24時間の介助・介護を受けることができます。
毎日の活動は、パン焼き、遠足、ガーデニング、音楽、ダンス、ゲーム等細やかな配慮のもと、スケジュールされています。なじみのメンバーと選任の介護スタッフが毎日一緒に生活することが、精神的な「落ち着きとゆとり」をもたらすのです。もちろんそこには、個人のプライバシーを尊重するという姿勢が基本に据えられているのです。
アシステッドリビング施設には、ステューディオ(ワンルーム)から2ベッドルームまであり、月額料金は1700ドルから3000ドル程度。身支度、食事、医療介護、入浴等の介助は、オプション料金となっています。一方、スペシャルケア施設は、入居前に家族と綿密な打ち合わせを経て、レベル1からレベル4までの介護の程度に応じた料金設定がされます。セミプライベート(2人1室)の場合で、月額2400ドルから3600ドル。プライベート(個室)では、月額2800ドルから4000ドルが標準的な料金です。
高齢者用施設は各都市で、望ましい土地活用として受け入れられている。他の土地活用に対するより、速やかに高齢者用施設計画の許可が下りているからです。また、これら施設は、騒音や交通混雑など環境破壊とも無縁である。地域にも、収入をもたらすことになります。これら施設は地域の人々20〜40人をスタッフとして採用することになり、雇用をも促進するのです。
|